八田亨氏の作品にみられる「三島」とは?

さて遅くなりなりましたが、先日JIBITAのインスタ、フェイスブックにて「三島」の予告を致しましたので本日はこちらにその内容をしたためる事とします。

しかしここでしっかり書いてしまうと、またかなりの長文となってしまう為、どうすれば分かりやすく簡略にお伝えできるか考えました。

その答えがこれです。

 

「三島」≒「象嵌(ぞうがん)」

 

これだけ覚えて頂ければもう終わりです。

 

では「象嵌」とは何かを知らなければ「三島」をイメージできないと思いますので、陶芸における「象嵌」について私なりに説明します。

 

◆「象嵌」

素地に模様を彫り込み、その部分に素地とは異なる色の粘土(泥)を埋め込み、その後、はみ出したところを削り取って文様化する事。

 

かなり簡単な説明ですが、まぁこんなところです。

 

八田亨「彫三島皿」

 

修業時代に初めて「象嵌」の説明を聞いた時に、「この細かく描かれた模様は絵付けではなかったんだ!」と、その技法の面倒臭さというか大変さに驚いた記憶があります。ちなみに「象嵌」には陶芸だけでなく金工、木工、象牙にも施され、それらには泥ではなく金や銀、螺鈿(貝)が嵌め込まれています。

 

うーむぅ、こうやって古い時代からの技術を垣間見るといつも思うのですが、昔の人の美意識の高さには本当に頭が下がってしまいます 汗!という事でここでは、

 

「象嵌」≠「絵付け」

 

という事も覚えておかれると良いと思います。

 

では次にその「象嵌」技法がなぜ「三島」と呼ばれているのかに触れていきます。

 

先ず、以下の写真を見てみましょう。なんだか分かりますか?

 

これは現在の静岡県三島市にある三嶋大社が古くから発行している「三島暦」というものです。

 

三島暦(三島市郷土美術館蔵)  写真 発行所 株式会社 淡交社 著者 谷晃 「わかりやすい高麗茶碗のはなし」より引用

 

茶碗に施された「象嵌」の文様が、この「三島暦」に書かれたくずし字の連なりに似ている事から「三島」と名付けられたそうです。

 

三島 銘「白浪」 写真 発行所 株式会社 淡交社 著者 谷晃 「わかりやすい高麗茶碗のはなし」より引用

 

 

そこで「三島暦」のくずし字とこの茶碗の文様を見比べると・・・・・・・・・・・

 

「どこが似とるねん!」

 

と突っ込みを入れたくなる気持ちはさておき、これまた昔の人の連想力というか想像力、造詣に感服してしまう訳です。

 

茶道をされている方や陶芸好き、茶陶好きの方はこの「三島茶碗」にはよく「花文様」が施されているのを目にされるのではないかと思いますが、「三島茶碗」の名称の由来は「花文様」ではなく、くねくねした線の文様からきています。これを「雨情文(うじょうもん)」と言いますが、「三島茶碗」にはほとんど「花文様」も付けられていてこれを「印花文」と呼び、これらのほとんどが14世紀から16世紀にかけて朝鮮半島の広い地域で作られたのです。

 

八田亨 「三島皿」  くねくねした「雨情文」が美しい。

八田亨 「三島飯碗」。この度のお気に入りの1点。この文様は「桧垣文(ひがきもん」。

八田亨 「三島飯碗」

 

という事で今回は「三島」についてでしたが、本当に知って頂きたかったのは「三島」は「絵付け」ではないので、かなり手間暇が掛かるという事です。八田氏の作品に関わらずこれから「三島」やその他の「象嵌」ものを見つけた時には、細かく細かくその作業風景を想像しながら御覧頂くとこれまでよりもきっと楽しくなると思います♩